〜身体の記憶に寄り添い、新たな選択肢を取り戻す〜
「実家に帰るのが重たい」——そう語って始まった今回の個人セッション。
この報告は、あるクライアントの実体験に基づく約1時間のセッション記録で、身体を通して浮かび上がった子ども時代の記憶と、そこから見えてきた新たな選択肢についてまとめたものです。
セッションの経過
フェニックス・ライジング・ヨガセラピー(PRYT)では、身体の動きや姿勢を通して生じる体験を、対話(ダイアログ)によって言葉にしていきます。
今回、クライアントが最初に選んだ姿勢は、膝を抱えて頭を下げる、まるで卵の殻の中にこもるようなポジションでした。
その姿勢の中で、過去のつらい家庭の情景が思い出されたようでした。母親の憎しみに満ちた言葉や感情が聞こえる中で、「じっとやり過ごしている」「暗いつらい感覚」といった体験が語られました。
PRYTにおいてプラクティショナーは、クライアントが体験していることを「楽にする」「励ます」といった介入をせず、そのままを尊重して共にいます。そうすることで、クライアント自身が自分の内側で本当に起きていることに気づき、それを受け止めていく機会が育まれるのです。
やがてクライアントは、自らの選択によって、仰向けで胸を開く姿勢へと切り替えました。そこでは、「胸の固い部分は何も感じられない。肺に呼吸は十分に入るが、その部分には届かない」と語っていました。
さらに、母親が祖母に「死ね」と言っていた記憶と、幼い自分の「動けない」「何も言えない」という無力感を追体験する場面もありました。
気づきと変容
次第にクライアントは、胸の奥にある固く重たい感覚と、下腹部にある安心感とを「対照的な感覚」として感じ始めました。印象的だったのは、下腹部には「楽しく爛漫だった子どもの頃のイメージ」が残っていると語ったことです。
辛い記憶だけでなく、身体の奥に優しい記憶も存在していたという発見は、大きな気づきになりました。過去の辛い体験に光を当てることで、忘れていた幼い自分に再会したような体験だったのかもしれません。
このように、ネガティブとポジティブの両側面の体験を通して、クライアントは自分自身の全体像を理解することで、自分の中に新たな可能性を見出していくのです。
セッション後には、次のような言葉が残されました。
「今後同じような場面に出会っても、私は何も『選べない』わけではない。明るい記憶が体の中にあることを思い出せば、優しい選択ができるかもしれない。」
さらに翌日には、母親のために好きなお茶とお菓子を買い、自然と優しい気持ちになれたという報告もありました。
まとめ
この事例は、セッションという守られた安全な場で、身体に刻まれた過去の記憶に触れることの大切さを示しています。自分自身をより広い視点から振り返ることで、自分が真に求めるあり方を「自分で選ぶ」きっかけになったのです。
フェニックス・ライジング・ヨガセラピーでは、「体に聴く」「言葉にする」「自分で選ぶ」という3つを大切にしています。小さな選択が、自分を取り戻す一歩になるのです。
おわりに
体と心を通して、自分を深く見つめなおすセッション。
もし今、「何かに押しつぶされそう」「言葉にならない想いを抱えている」と感じていたら、ぜひ一度、体を通して自分の声を聴いてみてください。
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2025-09-16
カテゴリ: スタジオブログ