先日、映画「しあわせのパン」を観た。北海道月浦という場所で、宿泊施設も備えたパンカフェ「マーニ」を営む水縞夫妻とそこを訪れる人々との一年を描いた作品だが、この映画で非常に印象的なのは、「間」(沈黙)だ。
面白い会話が続くドラマや映画もストーリーに集中させられるが、当然ながら、見ている我々の興味の対象は登場人物たちであり、主役はドラマの主人公だ。一方、多くの沈黙と思いが凝縮された僅かな言葉で構成されたこの映画を見ていると、登場人物に注意が向くだけでなく、そこで自分自身に起きている感情や思考にも気づかされる。喜びや穏やかさ、厳しさ、悲しみや慈しみなど、一つひとつの感情を十分に味わわせてくれる。終わりのテーマソングが流れる中で、この映画の主人公は誰でもない、強いてあげれば登場人物全員で、そこには観客である私も含まれているように感じさせられた。
2012-05-30
カテゴリ: アーユルヴェーダの日々