※この記事は、2025年版として新たに加筆・再構成しました。初めて読む方も、以前読んだ方も、ぜひもう一度「ちょこっとヨガ講座」に触れてみてください。
古代インドのヨガ教典のひとつに、パタンジャリによる『ヨガスートラ』があります。この書は、それまでの様々なヨガの実践法を八支則(はっしそく)として、8つの部門に体系化しました。これは現代でもヨガの重要な手引きとなっています。
八支則(はっしそく)
- ヤーマ(禁戒):他者や社会との関わりで守るべき倫理
- ニヤーマ(勧戒):自分自身の内面を整える習慣
- アーサナ(ポーズ):心身を安定させる姿勢
- プラーナヤーマ(呼吸法):呼吸と生命エネルギーの調整
- プラティヤハーラ(制感):感覚のコントロール
- ダーラナ(集中):心を一つの対象に向ける
- ディヤーナ(瞑想):集中が持続した状態
- サマーディ(三昧):対象との一体感・至高体験
ヨガは、心の揺れ動きを静め、本来の自己を取り戻すことを目的としていますが、この八支則をどう解釈するかは、時代や文化によって異なります。
8支則の2つの解釈
1. 段階的に進む「ピラミッド型」
1から8へ、下から順にステップアップしていく方法です。各段階をマスターしてから次へ進むため、目標は明確ですが、最終段階は遠く感じられ、たとえばアーサナ(ポーズ)のみを追求してしまう傾向もあります。
2. 同時に働く「車輪のハブ型」
8つの要素はすべて並列で、中心の軸(ハブ)を通してつながっています。どれか1つだけで動くのではなく、すべてが同時に作用し合い、目的達成を支えます。
クリパルヨガの視点
クリパルヨガも八支則を土台にしていますが、その解釈は「車輪のハブ型」に近いのが特徴です。創始者スワミ・クリパルはこう語りました。
「クリパルヨガの美しさは、ポーズと呼吸と瞑想が別々に起きているのではなく、すべてが同時に起きていることです。」
この視点により、実践者はヨガを「部分の積み重ね」ではなく、「全体が同時に息づく体験」として味わうことができます。
解釈の広がりと実生活への応用
パタンジャリが八支則をどのような意図でまとめたのかは学問的に探求できますが、それを日常にどう生かすかは、読み手自身の解釈にかかっています。
クリパルヨガでは、さらに独自の切り口から、宇宙の根源とされるチッタ(意識)とプラーナ(生命エネルギー)の2要素を包括的にとらえ、そこから「3つのステージ」という実践法を生み出しました。
次回は、この「3つのステージ」の哲学と実践についてお話しします。
(初出:2011年9月19日)
2025-08-13
カテゴリ: ちょこっとヨガ講座