Kripalu Newsletter - ヨガによって感情はどう変化するか?

ヨガが私たちに与える影響や効果はさまざまですが、「ヨガのポーズは、私たちの考え方や感じ方を形づくり、さらには行動を決める要因となる」という興味深い研究があります。今回は、ホール・ビーイング研究所CEOのメーガン・マクドナウの記事をお届けします。

考える体、感じるマインド

私たちは、ヨガが感情面において改善をもたらすことを真実として知っています。ヨガマットに足をつけた人なら誰でも、クラスが進行するにつれて部屋の雰囲気が変わっていくのに気づいたことがあるはずです。

ブレス・オブ・ジョイが実際に嬉しい気持ちにさせてくれるのはなぜでしょう?戦士のポーズが力強さを感じさせてくれるのはなぜでしょう?子供のポーズにゆだねると、自分が癒されていると感じるのはなぜでしょう?

体の動きとマインドの思考には密接な関わりがあります。これは、心身の関係と呼ばれます。正しく表現するなら「心身の結合」でしょう。マインドと体は、同じ生地から裁断されたものであり、コインの表と裏でもあります。体とマインドの間で密接にリンクし合うフィードバックループを、心理学では「身体化された認知」または「身体化された心」と呼びます。これらの用語は、研究者によって若干の違う意味になることもありますが、私たちはこの新たな領域から多くを学ぶことができます。

身体化された認知:その定義について

認知とは、知識を得して、統合し、活用するという思考のプロセスを指しています。そこには、取り込んだ情報を実用化する概念を形づくること、そしてその理解を基に判断することも含まれます。それは、推論、言語、気づき、知覚、判断などを含む精神機能なのです。

ポーズをホールドしている時、手のひらの長さを指先まで感じたり、両足が地に根づいている感覚、頭頂が空へ伸びていく感覚にきめ細やかな注意を向けていますが、この時、私たちはマットの上で、気づきを通して「身体化」という経験をしています。アーサナは、体の中に意識を向け、細部まで感じるのがどういうことなのか教えてくれます。それは、皮膚で包まれた体という器を、マインドの意識で満たすようなものです。ヨガを全身で体験すればするほど、その実践は豊かになります。

身体化された認知や身体化された心をテーマに研究する哲学者、心理学者、また人工知能の研究者さえ、体が認知を形づくる、と主張しています。もっと簡単に言うと、ヨガのポーズが私たちの考え方や感じ方を形づくり、さらには行動を決める要因となるということです。ホール・ビーイング研究所(ポジティブ心理学とヨガを研究する団体)では、この身体化された認知のことを「ヨガスパイア」(Yogaspire)と呼び、ポジティブな感情を育む練習として、ヨガのポーズを意識的に活用しています。

タダ・アーサナで自信を培う

タダ・アーサナ(山のポーズ)を2分間ホールドします。このポーズが体にどんな影響を与えるのかは明確です。肩が広く感じるかもしれないし、呼吸が深くなるかもしれません。ではこのポーズは、心にはどのように働きかけるのでしょう?ハーバード大学の研究者、エイミー・カディによると、2分間のホールドでホルモンに変化が起こり、その後の行動にも直接インパクトを与えるそうです。

ある研究調査では、参加者の唾液でホルモンのテストステロン(力強さや自信につながる)とコルチゾール(ストレス・ホルモン)の分泌を調べました。唾液を採取後、2つのグループに分かれ、ローパワーのポーズをとるグループ、そしてハイパワーなポーズをとるグループ、それぞれに2分間ホールドしてもらいました。

ローパワーなポーズとは、スペースをあまりとらず、腕は重ねたりまとめたりし、脚は守るような形におさめ、背骨をカーブさせ体を小さくするような動きです。ハイパワーなポーズとは、たくさんのスペースを使うもので、ワンダー・ウーマンが両脚を大きく開いて、両手を腰に当てている絵を想像してみてください。または、大胆な会社の重役がデスクに脚を上げ、両手を頭の後ろでゆったりと組んでいる様子を想像してみましょう。そんな雰囲気のポーズです。

2分後、被験者は再度、唾液を採取され、2ドルを渡され「このお金を取っておきたいですか?それともサイコロを振って2倍の金額になる可能性が50%あるギャンブルをしたいですか?」と訊かれました。たった2分間のポーズのあと、ハイパワーなポーズのグループは、他方グループと比べてテストステロンが増加し、逆にローパワーのポーズのグループではテストステロンは減少しました。同じハイパワーのグループではコリチゾールが減少し、ローパワーなポーズのグループではコリチゾールは増加したのです。後の研究で、力強いポーズをとった人は従順、あるいはニュートラルなポーズをとった人より、痛みに耐えられることがわかりました。また、ハイパワーなポーズのグループは、大きな決断を迫られるようなストレスの多い状況で、よりよい結果を残したのです。

パワーポーズを活用する

言い方を変えれば、体のスペースをたくさん広げると、パワー・ホルモンは増加、ストレス・ホルモンは減少し、生理機能が変化するのです。この変化は、決定や行動、態度に影響を与えます。ハイパワーなポーズを取る人は、ローパワーなポーズをする人に比べて、報酬に集中する傾向があります。ハイパワーなポーズのグループのうち86%がギャンブルをする方を選択し、逆にローパワーなポーズのグループでは60%だけが同じ選択をしました。

最後に、ハイパワーなポーズをしたグループは他方グループと比べると、著しく力強さを感じ、状況や環境をしっかり把握し統括できていると感じる、という報告がされています。研究者は「パワフルなポーズを2分間ホールドするというだけのシンプルなことが、被験者の生理機能面、メンタル面、感情面においても、ここまで著しい影響を与える。この結果が日常生活に示す影響はかなり重要」と報告しています。

メーガン・マクドナウ
ホール・ビーイング研究所のCEO。ホール・ビーイング研究所は、クリパルのポジティブ心理学修了コースを中心的にリードしているタル・ベン・シャカール博士とメーガンが共同で立ち上げた教育機関。

[YOGA BULLETIN 2013年秋号より抜粋]

2016-06-09

カテゴリ: Kripalu Newsletter

 

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