
私が初めてヨガを練習したのは、ヨガスタジオではなく、アメリカの小さなアパートでした。
1978年、私はコロラド州デンバーで農業研修生として働いていました。
工場のように巨大なグリーンハウス(温室)の中で一日を過ごし、
仕事を終えてアパートに戻る。そんな日々でした。
住んでいたのは、小さな半地下のアパートです。
友人が譲ってくれた白黒テレビが、部屋の片隅にありました。
仕事を終えて帰宅し、シャワーを浴びてテレビをつけるとニュースが流れています。
そして夕方6時頃になると、ヨガの番組が始まりました。
「Lilias, Yoga, and You」という30分の番組です。
照明をやや落とした背景に、装飾のない壁。
番組のセットは簡素でした。
神像や飾りもなければ、ヨガマットもありません。
インド音楽やマントラでもなく、静かなピアノの音色とともに、
Lilias Folan(リリアス・フォラン)が太陽礼拝をする映像から始まります。
それが終わると、ヨガについての簡単な解説をしてからポーズの練習に入ります。
テレビの画面の中で、長い黒髪を三つ編みにしレオタードを着たLiliasは、どこか東洋的な神秘性を感じさせるヨガインストラクターでした。ただ、ヨガのポーズの前後に語られる彼女の言葉には、精神性をことさらに強調するような雰囲気はなく、彼女自身の日々の体験からくるヨガへの信頼や情熱が、
自然に、そして親しみやすく伝わってきたのを覚えています。
ちょうど今の時代、多くの人がYouTubeを通してヨガを始めるように、
当時の自分も、部屋の小さな片隅でヨガに親しんでいたことになります。
インターネットはもちろん、DVDもまだ存在しない70年代。
この番組はPublic Broadcasting Service(PBS)を通して、
全米で30年近く放送されていました。
今日のヨガの普及に与えた影響は、計り知れないものがあるのでしょう。
あのとき、テレビの前で肩立ちや鋤のポーズをしていた自分が、その後こんなにも長くヨガの道を歩むことになるとは想像もしていませんでした。
そう思うと、不思議な縁を感じます。
すべての始まりは、あのデンバーの小さなアパートでした。
あの「Lilias, Yoga, and You」が、自分にとって最初のヨガでした。
今でもたまにLiliasのビデオでヨガをすることがあります。
そんな折、先日、その Lilias Folan の訃報を知りました。
そのときに出会ったヨガに、そしてLilias Folanに心から感謝を込めて。
2026-03-17
カテゴリ: コラム


