クリパルヨガ教師トレーニング(YTT)の修了生であるM・Nさんから、レポートが届きました。
〜200時間クリパルヨガ教師トレーニングを終えて〜と題したこちらのレポートでは、トレーニングを終えたからこそ実感できる「クリパルヨガの独自性」について分かりやすくまとめられています。
ヨガ教師を目指したい人だけでなく、クリパルヨガとはなにか?と興味を抱いている全ての方にお読みいただきたい内容となっていますのでぜひご一読ください。
200時間クリパルヨガ教師トレーニングを終えて
はじめに
本レポートでは、三浦敏郎氏がディレクターを務める2023年11月~12月の200時間クリパルヨガ教師トレーニングを受講した私が感じたクリパルヨガの独自性について綴る。
まず、はじめに私が最初ヨガに出会ったのは15年以上前に遡り、綿本彰氏のパワーヨガだった。本格的にヨガが暮らしの一部になってからは、アイアンガーヨガとYoga Works Styleに基づくハタヨガを主に練習し、アシュタンガヨガや陰ヨガに熱心だった時期もある。これまで他社の養成スクールも卒業し、複数のヨガの流派と様々なスタイルのヨガを練習してきたが、その中でもクリパルヨガには他にない強い独自性があると言える。
私が思うクリパルヨガの独自性は、そのアプローチ方法と着地点にある。
具体的に述べると
⑴ポーズ・呼吸・瞑想を同時に行う
⑵心と精神にもアプローチする
⑶生徒にエンパワーメントをもたらす
という3つの点にある。
この3つは独立して存在しているものでなく、むしろ密接に且つ段階的につながっており、これらが統合されたときに初めてクリパルヨガ独自の恩恵を受け取ることができる。
クリパルヨガの独自性
⑴ポーズ・呼吸・瞑想を同時に行う
ヨガといえば、呼吸と共に身体を動かすことや瞑想・呼吸法も含まれているというのは広く認知されているだろう。クリパルヨガでもまた、呼吸と動作を一致させ、センタリング瞑想や呼吸法がアーサナの練習とは別にサーダナ(*)の中に設けられている。
では、何が違うのか。
それは、アーサナを保持する時間の中に呼吸法と瞑想を重ね、アーサナから離れた後の統合の時間に瞑想を取り入れている点である。
クリパルヨガは、体験を重視するヨガだ。完成されたポーズを目指すことより、ポーズに留まり味わうことに重きを置いている。そのため、クリパルヨガ教師は体験を促すためにESRIT(**)などの独自の指導法を学び、生徒にクラス全体を通してウジャイ呼吸や目を瞑ることを何度も勧めていく。クリパルヨガの指導法の最大の特徴は、一人ひとりの生徒がそれぞれのアーサナに対する固有の関わり方に意識を向けていくことだ。生徒は自ずと、内面の移り変わり(感情・思考・エネルギーなどの変化)に注意が向き、単なる運動効果を超えた「自分だけのオリジナルな体験」を手にする。
⑵心と精神にもアプローチする
現代のヨガの多くは、身体に重きが置かれている。
身体を引き締める、柔軟性を高める、身体の歪みやこわばりを改善する等々。心への効果を謳う多くのスタジオや流派でも、実際のクラスでは身体能力の向上を目的としたアーサナの指導に終始していることが多い。
それはおそらく、心にアプローチするにはより多角的で高度なスキルが必要だからだろう。人を苦しめる思考の癖や行動パターンは、目に見えず、本人も自覚していない場合が多い。クリパルヨガは、ヨガの実践を通してその隠れた課題を露わにする。
また、クリパルヨガはヨガの実践に留まらず、ヨガ哲学の理解を大切にし、コミュニケーションの仕方や教師としての在り方、生徒の気づきを促す手法なども学ぶ。
個人的には、ディレクターのサーダナ中の言葉掛けや問いかけ、グループやペアでのシェアリング、PT(プラクティス・ティーチ:指導練習)での個別フィードバックなどから自己に対する気づきを得ることが多かった。
このように、一般的な流派では心への効果は結果論で生徒にその過程を委ねていることに対し、クリパルヨガではより深く個人の内側の世界に踏み込む。
その結果、生徒はそれまでの自分自身の在り方を振り返り、その原因や経緯を答え合わせしようとする。そのような自己探求の末、未来に対して選択ができることにも気づかされるのだ。
安心安全な場、クリパルヨガ独自の手法、そしてディレクターのファシリテーションやフィードバックスキル。これら3つによって、生徒は身体だけでなく、身体・心・精神を一つのものとして自己探求を進めていく。
⑶生徒にエンパワーメントをもたらす
上述のアプローチの結果、生徒にもたらされるのがエンパワーメントである。
これはクリパルヨガの最大の特徴であり、独自の恩恵であり、社会にコミットしているミッションでもある。クリパルヨガのエンパワーメントは、自己探求・自己理解に則った内面的なプロセスによって起こり、また個人ではなく、ディレクター(ファシリテーター)と複数人の生徒から構成された場の力が働くのが特徴的だ。
近年、瞑想やジャーナリングなど、ヨガに限らず内観に役立つ活動は多いが、気づいても変わらない、変わったけど自己理解は深まっていないことも多いだろう。エンパワーメントには、気づきが起こり、その気づきを自覚し、行動が促される場が必要だ。
つまり、辛い認知や選択を迫られる場面とそれを安全に創り出すディレクターの存在、「一人じゃない」と感じられる仲間の存在が欠かせない。
そのような辛い場面を乗り切るためにも身体は有効で、身体を使うことでその精神的な敷居は低くなり、分かりやすい体験にもなる。
エッジへの誘導や長時間のポーズの保持は、まるで人生の困難を先取りして心にあえて課題を与えるようなタントラの儀式、あるいは巧みに計算された心理療法のようにも感じる。その渦中にいるときは決して楽ではないが、あとから振り返ると有意義であり、より良く生きていくために必要なことである。
エンパワーメントの過程には、痛みが伴う。だからこそ、個人ではなく場の中で、本人の心からの自覚と必要性の実感のもと進むことが適当だ。それを可能にするのが、クリパルヨガの「変容の智慧」なのだろう。
クリパルヨガ教師に求められるもの
以上の3点を踏まえると、クリパルヨガ教師には、単なる「運動」のヨガに限らない多様なスキルと人間としての多角的な視点が求められる。また、他の流派以上に、教師それぞれの個性や人生経験を強みとして活かせる魅力があるようにも感じる。
本物のクリパルヨガ教師になるためには、他者の真意や本質を捉え、潜在性を引き出すコミュニケーション能力、改善点を前向きに提案するフィードバック能力、安心安全且つ建設的な場を創出するファシリテーション能力、そして一人の人間として人生を深く味わって表現して分かち合っていく生き方が必要である。おそらく教師の心の度量に比例するかのように、生徒は自身の心への恩恵を受け取り、各々のエンパワーメントの道を歩んでいくことだろう。
終わりに
最後に、クリパルヨガには分かりやすい特徴があり、時代や年齢を超えた普遍的な魅力がある。その特徴を下支えする明確で具体的な理念と手法、歴史とコミュニティがあり、差別化を図りやすいヨガである。
近年は、マインドフルネスやウェルネスなどの言葉が象徴するように内面を重視する時代に入り、より多くの人が個の力に気づき、全人的なケアを求めている。このような時代に、クリパルヨガはもう一つのヨガとして素晴らしい選択肢であることはもちろんのこと、今の時代にまさに求められている自己探求・自己管理(セルフケア)の道である。私が三浦敏郎氏のトレーニングで体験したように、その変容の智慧とヨガの実践によって、より多くの現代人が自分の潜在性に気づきより良く人生を生きていくことを心から願う。
*サーダナ:サンスクリット語で精神的修養のこと。YTT中はこのサーダナが毎日のカリキュラムに組み込まれていて、ヨガ教師になる為には非常に重要な体験となる。
**ESRIT:5つの単語(Enter、Sustrain、Release、Integration、Transition)の頭文字で、クリパルヨガ独自の指導法のこと。一つのポーズには、ポーズに入るEnter(導入)、ポーズに止まるSustrain(維持)、ポーズから抜けるRelease(リリース)、リリースしてからの Integration(統合)、さらに次のポーズへTransition(移行)する5つのフェーズから成り立っている。YTTでは、この5つのフェーズを意識的に指示しながら生徒を安全にかつ体験が深まる誘導を繰り返し実践して習得していく。
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2024-10-18
カテゴリ: コラム